住宅用火災警報器の解説

消防法により、全国一律に住宅用火災警報器の設置が義務付けられている。設置義務化が施行されたのは、平成18年6月1日であり、設置完了期限は、各市町村の火災予防条例により異なるものの遅くとも平成23年6月1日であった。しかし、総務省の調査結果(平成27年6月1日時点)によると、全国の設置率は81%、全国の条例適合率は66.4%である。

年々設置率は上昇しているものの、まだ普及しきっていない現状を知り、不動産を処分・運用する立場に立った住宅用火災警報器の必要性等について解説する。

本解説は次の構成になっている。

義務化の経緯」、「設置効果」、「設置対象住宅」、「設置場所」、「設置位置」、「未設置の責任問題

なお、住宅用火災警報器には、「煙」を感知するもの(煙感知器)と「熱」を感知するもの(熱感知器)があるが、設置を義務付けしているのは煙感知器である。

余談であるが、設置率等は都道府県別に見ると大きな開きがあり、私が住んでいる石川県は、設置率87.9%(6位)、条例適合率85.3%(2位)、隣の福井県は設置率94.9%(1位)、条例適合率90.8%(1位)で、北陸地方は優秀である。一方、設置率の最下位は沖縄の59.3%、条例適合率の最下位は岡山県の39.2%で、この両県で設置率と条例適合率の最下位を争っている。

義務化の経緯

総務省の調査によると、住宅火災による死亡人数は、建物火災による死亡人数全体の9割を占める。その死亡原因としては、「逃げ遅れ」が最も多く6割を占める。「逃げ遅れ」の理由として、就寝時間帯に火災が発生してしまうと、火災に気づくことが遅れるからである。特に避難をより困難にするのは煙で、呼吸できなくなったり、視界を奪ってしまう。

また、死亡人数の6割が65歳以上の高齢者であり、今後ますます高齢化率が上昇して行くことを踏まえれば、対策を打たないと、ますます死亡人数が増加していくことが明らかであった。

以上により、死亡リスクを減らすには、火災の早期発見による逃げ遅れを防ぐことが重要であり、全ての住宅に住宅用火災警報器の設置が義務付けられた。

設置効果

住宅用火災警報器の設置の義務化は、米国が1970年後半に取り入れていて、住宅用火災警報器の普及が進み、死亡人数が義務化前に比べ半減し、効果は立証されている。

ちなみに石川県に於ける平成21年からの3年間に発生した失火による住宅火災に対し、住宅用火災警報器の設置有無で比較すると次のとおりであり、死亡や損失リスクが大幅に低減していることが分かる。

  • 火災100件に対する死亡人数は、設置無しが11.9人、設置有りが6.4人で、設置有りが無しの54%である。
  • 火災1件当たりの焼損床面積は、設置無しが64.9㎡、設置有りが38.9㎡で、設置ありが無しの60%である。
  • 火災1件当たりの損害額は、設置無しが397万円、設置有りが256万円で、設置ありが無しの65%である。

設置対象住宅

住宅用火災警報器の設置を義務付けされている住宅は次のとおりである。

  • 戸建専用住宅
  • 戸建併用住宅の住宅部分
  • 共同住宅(アパート、マンション)

但し、次のケースは設置義務が適用されない。

  • 自動火災報知設備または共同住宅用スプリンクラー設備が設置されている。
  • 市町村の助成事業等により、既に住宅火災警報器と概ね同等の性能を持つ機器が、寝室に設置されている。

設置場所

住宅用火災警報器を設置しなければならない場所は次のとおりである。

  1. 寝室
    普段就寝に使われている部屋。子供部屋や高齢者の居室であろうと就寝に使われていれば全ての部屋が対象となる。
  2. 階段
    寝室がある階の階段(階段で対象階に上がったところの天井等)。但し、屋外に避難できる出口がある階は不要である。
  3. 3階建て以上の場合

    上記「 1番目リスト 」と「 2番目リスト 」の他、次の場所も必要である。

    • 寝室のある階から、2つ下の階の階段。但し、当該階段の上階の階に住宅用火災警報器が設置されている場合は不要となる。
    • 寝室が避難階(1階)のみにしかない場合は、居室がある最上階の階段。
  4. その他
    上記「 1番目リスト 」~「 3番目リスト 」の設置をしても、1つも設置する必要がなかった階が存在する場合は、その階に於いて就寝に使用していない床面積7㎡以上の居室が5部屋以上あれば、同じ階の廊下。

なお、各市町村の条例により、消防法で定める場所以外(例えば台所)にも設置を義務付けていることもあるので、詳しくは最寄りの消防署に確認されたし。ちなみに私が住んでいる石川県の場合は、台所の設置を推奨していだけで、義務化しているのは寝室と階段である。

また、台所に設置する場合、警報器の種類に注意すべきである。と言うのも煙感知器だと調理の煙や湯気により誤動作する可能性があるからで、そのような場合は熱感知器の方が適している。その一方で、台所の設置を義務付けしている市町村に於いて、煙感知器しか認めないところもあるので、購入前に最寄りの消防署に確認されたし。

設置位置

住宅用火災警報器は、天井以外にも壁に設置することも認められている。煙は上昇するので、できるなら天井の方が望ましく、壁でもなるべく高い位置に設置すべきである。ただ、次のような問題があるため、警報器を高ければどの位置に設置しても良い訳でもない。

  • 煙が発生し天井に到着すると、煙は天井を覆うことになるが、この時既存のきれいな空気が天井隅に押しやられ貯まってしまい、そこに設置してしまうと感知し難くなる。
  • エアコンの吹き出し口付近は気流の流れが大きいため感知しにくく、さらに煙感知器の内部に埃などが吹き込まれて故障や誤作動の原因になる。

そのため設置位置には、次のルールがある。

天井に設置する場合
  • 壁から警報器の中心まで、煙感知器なら60㎝(、熱感知器なら40㎝)以上離す。
  • 梁から警報器の中心まで、煙感知器なら60㎝(、熱感知器なら40㎝)以上離す。
  • エアコンなどの空気吹き出し口から警報器の中心まで、150㎝以上離す。
壁に設置する場合
  • 天井から警報器の中心まで15㎝から50㎝の範囲内にする。

未設置の責任問題

火災警報器が設置されていないために発生する法的な責任問題について、不動産を処分・運用する立場に立って述べる。

貸主の責任

消防法だけで判断すると、賃貸物件に火災警報器が未設置であっても、罰則に科せられることはない。しかし、民法(第601条)では、貸主は借主に対して、物件を賃貸借目的に従い利用させる義務を負っている。その義務には、借主の安全な利用確保のために、法に則した各種設備の設置義務も含まれると判断できる。

と言うことは、貸主が住宅用火災警報器を未設置のまま貸すと、賃貸借契約上、借主に対し債務不履行状態となる。更に言うと、この状態で万が一火災が発生し、未設置だったがゆえに、借主の被害が拡大した場合は、その建物所有者である貸主の工作物責任※1が発生する。つまり、貸主は借主に対し損害賠償責任を負うことになり、場合によっては刑事責任も問われかねない。

買主の責任

住宅を購入た時に住宅用火災警報器を未設置のまま引き渡され、未設置まま生活したとする。その後住宅から火災が発生して死傷者がでた場合、住宅の通常あるべき安全性が欠如していたことになり、買主の現所有者の工作物責任が発生することになり、しかも無過失責任を負うことになる。従って、現所有者が火災により損害が発生しないよう十分注意を払っていたとしても免責されなく、被害者に対し損害賠償責任を負うことになる。

売主の責任

上記事態が発生した時の売主の責任に関しては、引渡し後速やかに買主の方で火災警報器を取り付ける合意がなされていない限り、売主は消防法上の違法な状態で売却していることになるので、過失かつ違法と判断される可能性がある。

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