IT重説の解説

宅地建物取引業に於いて、今年(西暦2017年)の10月1日から重要事項説明(以下、「重説」と言う。)の取扱いが一部変更になった。これまでの重説は宅地建物取引士がお客と対面して行う必要があったが、今回の変更により、賃貸借に限り、テレビ会議等のITを活用した非対面の重説(以下、「IT重説」と言う。)も可能となった。

これを受け、以下にIT重説について解説する。なお、本解説では重要事項の説明を受ける立場の人を「相手方」と表現する。

本解説は次の構成になっている。

重説とは」、「IT重説運用の経緯」、「IT重説に於ける作業の流れ」、「IT重説が認められるための要件」、「その他、留意点等」、「新たに必要となる環境」、「IT重説のメリット」、「所見

重説とは

ここでは、IT重説の解説に入る前に根本の「重説」の基礎と誤解され易い点について述べる。重説の知識のある方は、「IT重説運用の経緯」から閲覧されたし。

宅地・建物※1の取引に於いて宅地建物取引業者(以下、「宅建業者」と言う。)は、取引により宅地・建物を所有又は借りることになる方に対し、契約締結前に契約上の重要な事項を書面で交付し、口頭で説明しなければならない。その目的は、取引する物件に関わる取引条件や権利関係等について事前に理解した上で契約を締結し、取引に関わるトラブルを未然に防止するためである。この説明が「重説」であり、その書面が「重要事項説明書」である。参考までに、この書面のことを宅建業者間では「35条書面」と言うこともある。

また、契約締結後に「こんな重要なことを聞いてなかった」と言われないためにも、買主・借主が説明を受けた証拠として、重要事項説明書に記名・押印を貰っている。この重説の交付・説明は宅地建物取引士が行い、宅地建物取引士の記名・押印も必要となる。

なお、説明を受ける相手方が宅建業者の場合に限っては、書面交付は通常どおり必要であるが、口頭説明は不要である。

重説が必要になる取引パターンは次のとおりである。

  • 自ら売主になる場合は、相手方の買主に対し必要
  • 自ら交換の当事者になる場合は、相手方の譲受人に対し、譲受人が譲受ける宅地・建物について必要
  • 売買の仲介・代理をする場合は、買主に対し必要
  • 交換の仲介・代理をする場合は、譲受人となる各当事者に対し譲受ける宅地・建物について必要
  • 賃貸借の仲介・代理をする場合は、借主に対し必要

参考までに、宅建業者自らが貸主になる場合は、借主に対して重説不要である。その理由は、貸す場合には、そもそも宅建業法の取引に当たらないためであり、このことはとして貸していても免許不要を意味する。また、宅建業者自らが買主になる場合は当然売主に対し重説不要であるが、購入する場合には宅建業法の取引に当たるので、業として購入しているのであれば免許が必要になる。

IT重説運用の経緯

西暦2020年までに世界最高水準のIT利活用社会を実現することを目標にした「世界最先端IT国家創造宣言」(西暦2013年6月14日閣議決定)を受け、宅地建物取引における重説に於いて、対面原則の見直しが検証対象となった。これにより、インターネット等を利用した非対面の方法による重説等のあり方について検討が行なわれ、賃貸取引(個人・法人)と売買取引(法人)に対し、西暦2015年8月~2017年1月にIT重説の社会的実験が行われた。

社会実験の結果、賃貸借取引については1,000 件以上のIT重説が実施され、かつ、目立ったトラブルが発生していないこと等から、一定の要件(後述参照)の下であれば、IT重説を行ってもも支障がないと認められ、本年度(西暦2017年度)中に本格運用に移行することが適当とされた。一方、法人間売買取引については、実施件数が数件にとどまり、社会実験の結果による検証を十分に行うことができなかったことから、本年度中の運用は見送られた。

IT重説に於ける作業の流れ

以下に、IT重説実施を宅建業者から見た一般的な作業の流れを示す。ここでは全体の大まかな流れを示し、その後で各作業の具体的な内容を解説して行く。

なお、「*」が付いている項目は必須作業(IT重説が認められるための要件)である。

  1. 事前準備の作業
    青色の下矢印
  2. 青色の下矢印
  3. 青色の下矢印

IT重説が認められるための要件

IT重説は以下の全ての要件を満たしていれば従来の対面の重説と同等と扱われ、非対面のIT重説でも認められるようになった。

双方向で遣り取りできるIT環境の整備

重要事項の説明する宅地建物取引士と説明を受ける相手方が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に映像を目視で確認でき、かつ当事者双方の音声を十分に聞き取れるこができるとともに、双方向で遣り取りできる環境で実施している必要がある。

補足として、

  • IT機器やサービスに関する具体的な仕様等は定められていなく、上記の環境を満たしていればスマートフォンでも認められている。なお、スマートフォンを利用する場合には、携帯電話の回線を利用することが多いと予想され、回線状況によっては画像や音声が途切れる等のトラブルが生じ易ため、相手方には、できるだけ電波の受信状況が良い場所でIT重説の説明を受けるようにしてもらう必要がある。
  • 相手方が画面の小さいスマートフォン等を利用していると、画面上で見取り図等の図面を提示して説明することには馴染まない場合もある。その場合は、図面を事前送付しておくなどして対処する必要がある。

重要事項説明書の事前送付

宅地建物取引士が記名・押印した重要事項説明及び説明に必要な添付書類一式(以下、「重要事項説明書等」と言う。)を、重説実施前に相手方へ送付しておく必要がある。

補足として、

  • 事前送付に於ける一般的な作業の流れを示す。
    1. 宅建業者は重要事項説明書等を作成し、宅地建物取引士が重要事項説明書に記名・押印をする。

      青色の下矢印
    2. 宅建業者は、重要事項説明書等2部を相手方に送付する。

      青色の下矢印
    3. 相手方は、送付された重要事項説明書を見ながらIT環境の下で宅地建物取引士の説明を受け、内容を確認する。

      青色の下矢印
  • PDFファイル等による電子メールを使った交付は認められない。
  • 宅建業者は、相手方がIT重説の内容を十分理解できるようにするために、IT重説を実施前に読んでおくように勧めるべきである。そのためには、送付してから一定期間を空けてから実施すべきである。

    なお、IT重説実施前に重要事項説明書等を送付しなければならないものの、相手方が少しでも早く内容を読んでおくことができるように、別途PDFファイルで送信しておくことは問題ない。

重要事項説明書等の準備とIT環境の状況確認

IT重説の実施前に、次の確認をしておく必要がある。

  • 相手方に事前送付してある重要事項説明書等が、相手方の手元にあること。
  • 相手方の映像や音声を宅地建物取引士サイドの端末で確認できること。
  • 宅地建物取引士サイドの映像や音声を相手方の端末で確認できること。

補足として、

  • 相手方の端末がスマートフォンだと画面が小さく解像度も高くないため、次の要件である宅地建物取引士証の確認ができる画像が確保されるかも、この時にチェックしておくべきである。
  • 上記の確認だけでなく、本番で画像や音声のトラブルが発生した場合に備え、別の連絡手段も確保しておくべきである。

宅地建物取引士証の確認

IT重説の実施の際に宅地建物取引士でない者が説明することを防止するために、宅地建物取引士はカメラ越しに宅地建物取引士証を提示して、相手方に宅地建物取引士本人であることを確認してもらう必要がある。

具体的な確認項目は次のとおり。

  • 相手方に宅地建物取引士証に載っている写真と説明をする人物の顔が同じであることを確認してもらう。
  • 相手方に宅地建物取引士証に記載されている氏名と登録番号等を読み上げてもらい、宅地建物取引士証は呼び上げた内容が正しいことを確認する。
  • その上で、宅地建物取引士証は相手方に宅地建物取引士証で本人であることを確認した旨を答えてもらう。

補足として、

  • 確認項目は上記のことで足りるため、宅地建物取引士の個人情報保護の観点から宅地建物取引士証に記載されている住所欄をシール等で隠しても問題ない。

その他、留意点等

その他の留意点等として、次のものが挙げられる。

IT重説中のトラブル

IT重説途中で画像や音声のトラブルが発生した場合、宅地建物取引士は直ちにIT重説を中断し、トラブルが解消しない限りIT重説を再開してはならない。なお、IT重説を中断した場合、当事者の希望により、残りの部分を対面による重説に切り替える対応も可能である。

IT重説実施に関する関係者の同意

重説の方法として、対面とIT重説の選択が可能となるため、選択に当たっては相手方の意向を確認する必要がある。意向の確認手法には定めがないが、トラブル防止の観点から、書面等の記録として残すべきである。同意書を郵送で送る手法でなくても、メールやファックスでも良い。例えば、相手方に同意の確認のメールを送り、相手方から承諾した旨の一文を返信して貰えば証拠が残るのでOKでる。

相手方のIT環境の確認

相手方から重要事項説明をIT重説で行うことについての希望があった場合、相手方におけるIT環境が、十分なものであるかを事前に確認する必要があり、確認の項目と内容は次のとおりである。

確認その1
項目

相手方のIT環境が、宅建業者が利用を予定するテレビ会議等のソフトウェア等に対応可能であること。

内容

宅建業者が利用を予定するテレビ会議等のソフトウェア等に相手方のIT環境が対応していない場合には、IT重説が実施できないため、相手方が利用を予定する端末やインターネット回線等について確認する。

確認その2
項目

宅建業者が利用を予定するテレビ会議等のソフトウェア等の利用に必要なアカウント等を相手方が有していること(宅建業者が利用者のアカウントを用意する場合には、確認不要)。

内容

IT重説で使用するテレビ会議等のソフトウェア等によっては、アカウント等の取得が必要となる場合もあるため、宅建業者は相手方のアカウント等の有無について確認する。

確認その3
項目

相手方がIT重説で求められるIT環境を満たす機器等を利用すること。

内容

宅建業者は、相手方の情報ツールがIT重説で求められるIT環境を満たすことを確認する。

説明を受ける相手方が契約当事者本人等であるかの確認

重説に於いて、説明を受ける相手方が、契約当事者本人等であることを前提している。IT重説の場合には、宅地建物取引士が契約当時者本人等と直接会わないで契約に至るケースも想定されているため、重説の実施までに相手方の身分を確認し、契約当事者本人等であることを確認することが求められる。

なお、契約当事者本人等であることの確認は、IT重説の実施の段階で、公的な身分証明書第三者が発行した写真付の身分証で行うことになる。また、写真付きの身分証明書がない場合でも、健康保険証と住民票など、複数の公的証明書により本人確認をすることが可能である。

録画・録音への対応

IT重説の状況を録画・録音により記録に残すことは、トラブルが発生したときの解決手段として有効である。他方、重説には、宅地建物取引士や説明の相手方の個人情報のほか、貸主等の個人情報が含まれている場合がある。また、IT重説の実施の記録については、断片的に記録されたり、編集されたりすることによって、本来実施された内容と異なる記録が残るケースも想定される。そのため、次のような対応で録画・録音を行うことが適切である。

  • IT重説の実施中の状況について、録画・録音をする場合には、利用目的を可能な限り明らかにして、宅建業者と相手方の双方了解のもとで行うこと。
  • 重要事項説明の実施途中で、録画・録音をすることが不適切と判断される情報が含まれる場合については、適宜、録画・録音を中断する旨を説明の相手方にも伝え、必要に応じて録画・録音の再開を行うこと。
  • 宅建業者が録画・録音により記録を残す場合、相手方の求めに応じて、その複製を提供すること。

なお、宅建業者が取得した録画・録音記録については、個人情報保護法に則った管理が必要となり、IT重説以外で取得した個人情報と併せて、適切な管理を行うことが求めらる。

ワイプ画面(小窓画面)

IT重説の最中に於いて、説明をする業者自らがどのように相手方側に映っているかを確認できるように、宅地建物取引士の端末画面上のワイプ画面で、宅地建物取引士の映像も表示されることが有効である。そのためワイプ画面に於いても、映像が目視で確認できる程度の解像度であるべきである。

相手方に対し内覧の実施

仲介又は代理業者は、説明を受ける相手方に対し、法律上は取引物件の内覧をさせる義務を負っていない。しかし、実際に物件の確認をせずに重説を受けてしまうと、想像していた内容と異なっていたり、実際に見ていないことにより不満が生じる等のトラブルが発生する可能性が高くなる。そのため、仲介又は代理業者は、IT重説によるか否かに関係なく、内覧を勧めるべきである。

個人情報保護法に関する対応

IT重説の実施によって得た情報の中には説明の相手方等の個人情報が含まれるため、適切に管理する必要がある。個人情報の取扱いは、次の法律等に基づく必要がある。

特に、録画・録音を保存した場合、当該録画・録音記録は、個人データに当たる可能性があることから、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」P.86以降の別添「講ずべき安全管理措置の内容」を踏まえた管理をする必要がある。

また、テレビ会議システムによっては、システムのサービスを提供する事業者が独自にプライバシーポリシー等を定めている場合があるため、このような場合にも、説明の相手方から当該プライバシーポリシーについて同意を得ることが必要となる。

新たに必要となる環境

IT重説の実施を可能にするために、どのような機器等を新たに用意する必要があるのか気になるところであるが、必要となる環境は次のとおりである。

宅建業者に於いては、事務所にパソコンを置いていない業者はいないだろうから、新たに端末を購入する必要はない。ただ、パソコンにカメラやマイクが付いていなければ、新たにWEBカメラやヘッドセットを購入する必要があるが、安い商品であれば両方合わせても5,000円でお釣りがくる。

相手方に於いても、パソコンを持っている方も多いだろうし、パソコンがなくてもスマートフォンでも問題ない。スマートフォンであればカメラやマイクが付いているので新たなデバイスの購入も不要である。

IT重説に適したソフトウェアとしてどのような商品が世の中にあるか私自身が把握できていないものの、私が思いつくものとしてSkype、LINE、Web会議システム等が挙げられる。宅建業者と相手方の両者に言えることであるが、SkypeやLINEであればアカウントを取得する必要があり、Web会議システムであればアカウントを取得する必要がないがWeb会議用アプリをインストールする必要がある。どのソフトも一長一短があるが、業者に掛かる維持費や整備負担の度合いも重要であるが、相手方の準備の負担や重説中のストレスの度合いを重視して判断すべきと考える。

IT重説のメリット

従来の対面重説に比べ、IT重説は次のメリットがある。

  1. 従来の一般的な賃貸借作業の流れは次のとおりとなる。

    「候補物件の内覧 」右矢印 「入居希望物件の申込」 右矢印 「入居希望者の審査 」右矢印 「重説・契約締結」 右矢印 「鍵の受渡し・引越し」

    この一連の作業を1日で完結するには無理がある。通常であれば相手方は「内覧」、「重説・契約締結」及び「鍵の受渡し・引越し」の3回出向く必要があり、遠隔地の相手方も同様である。遠隔地の相手方の場合は1回出向くにしても高額な交通費や長時間を費やし負担が大きい。しかし、IT重説を実施すれば重説に出向く必要がなくなり、その分の負担軽減に繋がる。

    なお、従来でも出向く回数を減らすために、「引越し」に出向く日に「重説・契約締結」を行うことにより、出向く回数を1回減らすことも可能であるものの、お勧めできない。と言うのも、契約締結・引越し前提で出向くことになるので、もし重説の説明を受け想定外の問題等が見つかっても、十分検討する時間もなく契約締結・引越しするしかなくなるからである。また、引越日に遠隔地から出向いて重説・契約締結を行なおうとすると、引越作業時間が十分取れなくなる難点もある。

    参考までに、従来の重説は対面で実施する必要があることから、業者は相手方に来店するように促すが、重説は宅建業者の事務所で行う必要もなく、相手方の都合で来店できなければ宅建業者が相手方の自宅等に出向いて重説を実施することもある。しかし、遠隔地の場合は、宅建業者が遠隔地へ出向くことは通常有り得ない。と言うのも、たとえ移動時間を確保できたとしても、往復の高額な交通費を負担していたら仲介する意味がなくなるからである。

  2. 遠隔地でなくても仕事・家庭等の諸事情で来店が難しいとか、業者が相手方の自宅へ出向くにしても日程調整が難しいことがある。そのような状況下でもIT重説だと出向く必要がないので、お互い重説実施の時間だけ都合つければ良く、日程調整が従来より容易になる。

  3. 上記の「 茶の1番目リスト 」及び「 茶の2番目リスト 」でも述べたとおり、重説を対面で実施するのは、現実的には困難な場合がある。それでも宅建業法に従い対面で実施しようとすると、一方に過剰な負担が掛かったり、相手方は1日で多くの手続を済ませようとしてリスクを負ったまま契約締結に至ったり、あるいは話自体を流すしかなくなる。

    このような現実的に対面困難な場合は、宅建業法に抵触することは十分承知の上で重要事項説明書を相手方に郵送し、相手方の記名・捺印が入った重要事項説明書を業者へ返送してもらっているケースが多いと推測する。

    そうだとすると、このような従来の悪しきケースに於いて、IT重説が可能となれば宅建業法に抵触しなくなる。つまり、IT重説は、従来の宅建業法違反を防止する手段を提供していることにもなる。

  4. 従来の対面重説だと、相手方は宅建業者の店舗で説明を受けることが一般的であり、重要説明書を事前に受け取ることはない。従って宅地建物取引に不慣れな相手方は、日頃関わりのない不動産屋の店舗で多少の緊張感を持ちながら、専門用語を含んだ説明を聞くことになり、何となく分かった気になるだけで、十分な内容確認・質問は難しい状況であった。しかし、IT重説であれば、相手方は事前に重要事説明書を受け取り、前もって目を通すことにより疑問点等を洗い出しておくことも可能となるので、説明を受ける際は、質問等もし易く、しかも自宅等のリラックスできる環境下で説明を受けられ、より深く理解できる。

所見

非対面のIT重説が可能になったからと言って、従来の対面重説が不可能になった訳でもないので、宅建業者から見た場合に態々IT重説の環境を整備しなくても問題ないと言う考えもできなくない。しかし、環境整備をしておけば、相手方の状況によってはIT重説による、より良いサービスの提供が可能となり、場合よっては(上記メリット 「茶の3番目リストで述べたとおり)宅建業者の違法行為を避けることも可能となる。

今後IT重説が世の中に普及しだすと、宅建業者が相手方にIT重説を提案しなくても、相手方からIT重説を要求してくることも十分あり得るが、この時に業者がIT重説の環境整備をしていないと、来店による対面重説を要求するしかない。この時、従来にない次のトラブルが発生し易くなると考える。

相手方が遠隔地の場合、従来までは相手方に来店を要求しても来店するのが常識なんだと思ってくれて交通費が要求されることはなかったかもしれない。しかし、IT重説が可能となったことにより、相手方の立場になれば高額な交通費と長時間の束縛を避けることができるIT重説を要求したにも関わらず、宅建業者の都合で来店しなければならなくなれば、「そちら(業者)が、こちら(相手方)に出向いてくれとまでは言わないが、せめて来店のための交通費くらいは負担してよ」と要求される可能性が、従来より明らかに高くなると考える。その場合に相手方がどうしても自費の来店を納得しなければ、現実的には違法行為(IT重説でないが重要事項説明書を郵送)を行わない限り話を流すしかなくなる。

IT重説が行われるケースとして、真っ先に思い浮かべるのは遠隔地の相手方の入学、入社及び転勤等であり、そうなると都市部の需要が高く、地方は需要が低い面がある。しかし、(上記メリット 「茶の4番目リスト で述べたとおり)宅地建物取引は相手方にとっては人生の中でも重大な契約であることから重説をしっかり理解した上で契約に臨みたいと思う筈であり、今後IT重説が一般の人にも知られることになり、かつ相手方の準備作業が煩わしいものでなければ、地方に於けいてもIT重説を希望する相手方が増えて行くと考える。

IT重説の環境整備は、(「新たに必要となる環境」で述べたとおり)基本的には当事者の既存端末を利用できそうなのでハードルは高くなく、またIT重説の作業も慣れていけばスムーズに進めることができると思われる。

今回のIT化は、賃貸借取引の重説のみに限られ、法人間売買取の重説は見送らた。限られた取引の限られた手続に於けるIT化であり、中途半端さを感じる。今は過渡期であり、今後もIT化の波を避けることはできないのは明らかであり、電子文章に於いて偽造・改竄不可能な電子署名が普及していけば、近い将来は宅地建物取引の重説だけでなく契約締結もIT化が実現される筈である。

以上のことを踏まえれば、IT重説の対応は緊急を要すものでもないかもしれないが積極的に行うべきと考える。

また、昨今の不動産業者WEBサイトで載せている物件画像は、静止画だけでなく、動画やVR等も見かけるようになり、昔に比べWEB上で物件の様子をより正確かつ詳細に感じ取ることができるようになっている。しかし、このような物件画像は、業者がアピールしたい部分がメインであったり、公開している画像もリアルタイムのものでない。そうなると、相手方にすればWEB上だけで申込むか否かの判断するには抵抗感があり、宅建業者にしてもトラブルを避けるためにも契約締結前に実際の物件を内覧してもらうように勧めることになる。

しかし、もし相手方がWEB上で、その時点の物件状態を隅々まで自由に確認でき、リアルタイム(又は後日)に業者へ質問できるのであれば、実際の物件を内覧せずWEB上で判断することに抵抗感がなくなる人も多くなると思われる。私は、皆が便利と感じるのであれば将来は実現すると思ってしまうので、いずれ将来は、自宅から外出することなくWEB上で宅地建物取引を完結させることに抵抗感のない社会が遣ってくると考える。

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