空家対策特別措置法の解説

西暦2015年5月26日から空家等対策の推進に関する特別措置法(空家対策特別措置法)が全面施行された。これにより、治安や防犯上、著しく問題のある空家に対し、市町村が撤去や修繕の命令や強制撤去等の措置を行えるようになった。

以下に、法律施行の背景措置内容及び他国との比較について解説し、空家対策についての所見を述べる。

背景

現在、住宅の供給過剰と人口減少により、空家が急激に増加し続けている。

総務省によると、西暦2013年10月時点で、総住宅数6,063万戸に対し、空家数は820万戸(賃貸住宅、別荘及び売却用を除くと、放置された空家は318万戸)で、空家率は13.5%である(ちなみに石川県は14.8%)。空家数は20年前の1.8倍と急激に増えている。

また、野村総研によると、このままで行くと2040年には空家率がなんと43%になると予想している。2軒に約1軒は空家になった状態を想定すると、町自体が機能するのか心配になる。

空家対策特別措置法が施行された背景は、増え続けている空家が適切に管理されないと、衛生、防災上の問題が発生し、また景観の悪化等も懸念されることから、地域住民の保護、生活環境の保全及び空家活用の対策が必要になったからである。

措置

全面施行により、空家等※1の中で著しく有害となる恐れのある建築物に対し、市町村が「特別空家等※2」に認定することにより、改善等のための措置を行えることになった。これにより、所有者等に対し自主的な撤去、売却及び有効利用を促す狙いである。

特定空家等に対する措置として、次のものがある。

  1. 空家等への立入調査(事前準備)

    特定空家等か否かの判断をするための立入調査。空家所有者等が立入調査を拒めば、20万円以下の過料が科せられる。

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  2. 特定空家等の所有者等への助言又は指導

    立入調査の結果、管理不全な状態である、又はおそれがあると判断された場合は、所有者等に対し、改善するように助言又は指導が行われる。

    助言又は指導に対し改善が見られない場合は、勧告へ。

    なお、この段階で、行政に居住や管理の実績を示し、空家でないと認めさせることができれば、措置を受けなくてすむ。

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  3. 特定空家等の所有者等への勧告

    住宅用地に関しては、現在固定資産税及び都市計画税に於ける固定資産税評価額の軽減措置※3があるが、本勧告を受けると軽減措置がなくなる。

    勧告に伴い猶予期限が与えられるので、期限内に改善されれば軽減措置を受けられるが、改善されないされなければ、命令へ。

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  4. 特定空家等の所有者等への命令

    命令に従わなければ、50万円以下の科料が科せられ、撤去等の行政代執行へ。

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  5. 特定空家等への行政代執行(行政上の強制執行)

    空家が強制撤去され、その解体費用が請求される。

他国との比較

他の先進国も日本のように空家率が増え社会問題になっているかと言うと、他国の空家率は、例えば英国が3~4%、ドイツが1%に過ぎなく、日本固有の問題である。その原因は、新築住宅の造り過ぎにある。流通する住宅を他の先進国と比較すると、欧米では中古住宅が70%~80%を占め、新築が一部に過ぎないのに対し、日本では中古住宅は10%台に過ぎず、新築住宅が大半である。この実態が示すとおり、日本は他の先進国に比べ、異常と思える程の新築住宅を造り続けていてることが分かる。

日本が新興国のような人口増加が期待できるのであれば、これまでのように新築住宅を造っていても良いだろうが、年々人口が減るのは明らかな日本では、新築住宅を造れば造るほど空家が増加することになる。

他の先進国が、新築住宅の割合が低い理由の1つは、総住宅数を管理していることが挙げられる。長期的な計画で住宅総数を管理することにより、新たに必要になる新築住宅数を予想し、税制や金融面等でコントロールしているから、空家率を低く抑えられている。

所見

市町村は所有者の意向に関係なく、強制的に住宅を解体できる行政代執行が可能となり、かつ解体費も所有者に請求できるようになった。しかし、これで特別空家等がスムーズに減っていくとは思えない。と言うのも所有者は好き好んで特別空家等の認定を受けるような酷い状態にしている筈もなく、自主的に解体等の改善を行えない立場の人が多いと思われる。市町村も強制的に解体したとしても費用を所有者から回収できそうもなければ、行政代執行に対し慎重に成らざるを得ないと思われる。

また、現在日本では、新築住宅の供給過剰と人口減少により、空家が急激に増加し続けている。一方、施行された空家対策特別措置法は、1つの対策となるが、著しく問題のある一部の空家に対する対策に過ぎなく、800万戸を超える空家の対策となっていないので、更に空家が増え続けるのは明らかである。

政府が他の先進国のように住宅戸数をコントロールすることに違和感もあるが、今回施行された空家対策特別措置法だけでは空家問題は解決しない以上、日本も長期的な計画で住宅総数をコントロールするなど、中古住宅市場が活性化する方向に向うような抜本的な対策を取らないと、近い将来「向こう三軒両隣」と親しくしようとしても、内3軒が空家の状態に成りかねない。

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