スポンサードリンク


賃貸物件のエアコンと費用負担対象者

共同住宅(アパートやマンション)、貸家等の賃貸物件に於いて、昔はエアコンが設置されていない物件も見かけたが、昨今は一般的な生活する上で必需品になりつつあり、殆どの賃貸物件にはエアコンが設置されている。よって、エアコン絡みのトラブルに遭遇するケースも十分有り得る状況である。
借主や貸主になる立場の人は、エアコン絡みの原状回復等に於いて、原則ではどう扱うのが正解なのかを知っておかないと、貸主と借主の思いの相違からトラブルに発展していったり、知識がないために相手方の言いなりになる破目になりかねない(仲介業者や管理業者が間に入っていたとしても、中には中立の立場で発言しない業者もいるかもしれないので、原則は知っておくべき)。
そこで、以下にエアコン絡みの原則を整理してみる。なお、この原則を把握していれば、エアコンに限らず賃貸物件で発生する費用はどちらが負担すべきか判断する時に役に立つと思う。

エアコンが故障した場合

賃貸借契約書に、エアコンが入居中に故障した場合に修繕費等の負担が、貸主又は借主のどちらになるか明記されていれば、その人の負担になる。
賃貸物件の設備として設置されているエアコンに対し、契約書に負担の明記がされていなければ、借主に故意・過失、善良な管理者の注意義務(民法第400条:一般常識人としての最大の注意をしろと言うことで、以下「善管注意義務」と言う。)違反、その他通常の使用を超えるような使用による消耗等については、借主負担となる。言い方を代えれば、通常の使用でエアコンが壊れた場合は、修理費又は修理不可による新品への取替費は貸主負担となる。

なお、エアコンに限った話でないが、借主に過失がなく通常の使用で壊れた物は全て貸主負担になる訳でもない。通常、賃貸借契約書に明記されているが、軽微な修繕費(e.g. 畳みの表替費、障子の張替費、電球の取替費)は、通常の使用をしていても借主負担となる。
また、本来なら貸主が負担すべき修繕費(必要費)を借主が立て替えた場合は、直ちに貸主に請求できる(民法第608条第1項)。借主が立て替えるケースとしては、緊急を要する場合や貸主に修繕を要求しても修繕しない場合等が考えられる。

その他、エアコンは入居前から設置されていたが、賃貸物件の設備として設置している訳でなく、入居者へのサービスとして設置してある場合がある。例えば、前入居者が自己負担で設置し、退去時貸主の了解の上で撤去せずに置いて行ったエアコンである。この場合は入居中に故障しても貸主負担で修繕されなく、賃貸借契約書の特約にその旨が明記され、また内覧時にも説明がある筈である。
もし、契約時に修繕の対象外である旨の説明もなく、入居中に故障した時点で始めて貸主や管理業者から修理しないと言われてしまった場合は、私が借主であれば以下のように対処する。
まず、次の2点を確認する。
・賃貸借契約書あるいは(契約前に仲介業者から説明を受けた)重要事項説明書の設備の欄には、「エアコン何台有り」の様にエアコン付きの賃貸物件であることが明記されていること。かつ、
・契約書に故障しても修理しない旨の特約が存在しないこと。
その上で、次のように反論する。
「設備としてエアコンが付いている賃貸物件と思ったから契約することにしたのに、このエアコンが修理対象外である旨の説明は一切受けていなかった。」と。

借主が自己負担でエアコンを設置した場合

入居中、借主が特定の部屋にエアコンが欲しくなり、自己負担で設置するケースもある。エアコンを設置すると言うことは、配管のため貸主所有の建物の壁に穴をあける必要が出てくるとので貸主の了解を得る必要があるが、借主の立場からすると別の意味でも貸主に設置の同意を得ておくべきである。
と言うのも、借主が自己負担で設置したエアコンは、貸主の同意を得ていれば「造作買取請求権」(借地借家法第33条)が発生するからである。造作買取請求権とは、賃貸借契約終了時に、借主は貸主に対し、造作を時価で買い取ることを請求できる権利のことである。なお、「造作買取請求権」と似たような権利で「有益費償還請求権」(この権利の内容は今回割愛する。)があるが、判例によるとエアコンは「有益費償還請求権」でなく「造作買取請求権」の対象となる。
一方で、借主の立場に立つと、この「造作買取請求権」は契約終了時に買取請求されるので悩ましい権利であり、借主の造作には同意し難い。ただ、この権利は賃貸借契約の特約で借主に放棄させることができるので、私が貸主であれば放棄の特約を付けておいて、入居中のエアコン設置には同意し、契約終了時点で借主に撤去させるか、両当事者にとってメリットがれば金銭の授受なしで置いていってもらう。

原状回復に於ける費用負担対象者

国交省のガイドラインによると、契約終了に伴う原状回復に於ける費用負担対象者は次のとおり。

基本的な考え方

1)経年劣化(建物、設備等の自然的な劣化・損耗等) ⇒ 貸主負担
2)通常損耗(借主の通常の使用により生ずる損耗等) ⇒ 貸主負担
3)借主の故意、過失、善管注意義務違反及びその他通常の使用を超えるような使用による損耗等 ⇒ 借主負担

上記「1)」と「2)」は、賃貸借契約の性質上、賃料でカバーされているとの判断から貸主負担となり、まして建物価値を増大させるグレードアップの修繕等を借主が行う義務はなく、当然貸主負担となる。
また、通常の使い方で発生する損耗等であっても、借主のその後の手入れ等が悪く、損耗等が拡大したと考えられるものは、拡大部分については借主の善管注意義務違反があることから、借主負担部分も発生する。

エアコンによる損傷等の具体例

・借主によるエアコン設置による壁のビスの穴や跡 
エアコンは、一般的な生活をする上で必需品になってきており、その設置により生じる壁のビスの穴や跡等は通常の損耗と考えられるので、貸主負担となる。
・エアコンの内部洗浄
喫煙等による臭い等が付着していない限り、通常の生活に於いて必ず内部洗浄を行うとは言い切れなく、借主の管理の範囲を超えているので、貸主負担となる。
・エアコンの水漏れ放置
エアコンから水漏れが発生していたが借主が放置したために壁が腐食した場合は、壁の腐食に関しては借主の善管注意義務違反であり、借主負担となる。

借主に負担させる特約

賃貸借契約は、強行規定※1に反しないものであれば、特約を設けてることは契約自由の原則から認められているので、一般的な原状回復義務を超えた一定の修繕を借主に負担させることは可能である。しかし、借主に社会通念上の義務とは別に新たな義務を課すことになるため、判例等からみても特約には次の要件を満たしている必要がある。
・特約の必要性があり、暴利的でない等の客観性、合理的理由が存在すること。かつ、
・借主が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること。かつ、
・借主が特約による義務負担の意思表示をしていること。

※1 強行規定
強行規定とは、法令の規定の内で、それに反する契約等の合意をしても無効となり、適用される法令規定を言う。参考までに、契約等の合意により変更が認めらている法令規定を「任意規定」と言う。

コメントは受け付けていません。

サブコンテンツ

このページの先頭へ